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「RPAしくじり先生」が説く“つまずきポイント”3つ

» 2018年03月28日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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「上司から『まずはやってみろ』と言われるものの、ビジネスマンに失敗は許されない」−−RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)導入プロジェクトにアサインされる担当者の心情をそう代弁するのは、ユーザーとしてRPA導入を経験した人材サービス企業、ディップ株式会社(東京都港区)次世代事業準備室の進藤圭室長だ。ホワイトカラー労働者の定型業務を代替するRPAの活用は、現在多くの企業で検討されている。本記事では、クラウドRPAツール「BizteX cobit」を提供するBizteX株式会社がさる1月25日に都内で開いたセミナーで登壇した同氏の発言から、業務をロボット化する際の実践的な“心得”を紹介する。

導入経験に基づくRPAの「つまずきポイント」とは

「RPAしくじり先生」を自称し、導入の過程で得た教訓を講演などで発信している進藤氏が所属するディップは、アルバイトや派遣社員を求める企業と若年層とのマッチングを事業の柱としている企業。近年の少子化で事業機会縮小のリスクに直面していることを受け、同社は2017年4月、AI関連のベンチャー支援プログラム「AI.Accelerator」を創設。「たとえば5人分の求人枠があったとき3人分を人間が担い、残る2人分はAIやRPAの活用でまかなう提案」(進藤氏)を構想している。

社内業務の効率化はもとより、新事業に向けた準備の意味合いもあったRPAの導入に際しては、システム部門が手薄な自社の事情も勘案し、運用の負担が少ないクラウドを選択。AI.Acceleratorの採択企業でもあるBizteXのサービスを用いることが決まった。同社は「BizteX cobit」を業務用携帯電話の通信量確認など4つの業務に導入しており、年間480時間相当の業務を削減。既に導入コストに見合った効果が得られているという。

セッションの中で進藤氏は、自社のRPA導入プロセスについて、「コンセプトの設定」と「先行事例の研究」、さらに「対象業務の選定」という3つのポイントでつまずいたと説明。各段階に対応して頻出する「働き方改革」「ある導入企業が何%の業務改善を実現」「ROI(投資対効果)の大きい順に検討」といったフレーズは、いずれもプロジェクトの失敗を招きかねない“要注意ワード”だと警告した。

このうち「働き方改革」について進藤氏は「言う側である経営層が気持ちいいだけで、言われた社員は反発したくなる。この言葉を発するだけでは『お前の仕事にはムダが多い』と言っているようなものだからだ」と指摘。ロボット化を推進する担当者は、あくまでも現場側の視点に立ち、効率化の取り組みが前向きに受け入れられるような説明を工夫すべきだと説いた。

進藤氏はまた、先進的なRPAユーザーの事例紹介記事について「優秀な管理職ほど影響されやすい」と分析。その上で「発表されるほどの成功事例は、全体からみれば少数。ファッション雑誌のすてきな着こなしをそのまま真似ても似合わないのと同じで、自社と共通する部分を見つけて参考にすることが大切だ」と述べた。

加えて同氏は、ロボット化に伴うROIについて「大きな効果が得られるケースは、それだけ業務規模も大きい。ロボットによる新たな業務ルートを構築している間も従来の業務は止められない以上、しばらく二重に発生する人的・コスト的な負担に耐えられるかが問題」とコメント。余裕を持って取り組みを進めるには短期的な成果ばかりを追わず、小さな業務から少しずつ実績を積むべきだとした。

まずは「やりたくない仕事」のアンケートから

「(IT)システムの話のようだが、けっきょく問題となるのは人間の話。働く人のことを見て考えていくのが非常に大事で、それが難しくも面白いところ」。人が担ってきた作業をソフトウエアで代替していくRPAの本質をそう評した進藤氏は「ロボット化に伴い、人から仕事を“奪う”ことがあるのは事実。できるだけ気持ちよい形で取りのぞいてあげることだ」とも発言。セッションでは、同社がつまずきを克服するために採った具体的な方法についても明かされた。

それによると、同社ではRPA導入にあたっての社内向け告知で「帰宅時間を早めれば、みなし残業の範囲では時間あたりの給与が増える」という社員にとっての具体的メリットを前面に打ち出し、「やりたくない仕事」についてのアンケートをWeb経由で実施。寄せられた110件の候補について検討を加え、順次ロボット化を進めている。こうした検討の中では、作業規模を重視するのに加えて「(給与水準が高い)正社員が行っている作業」「日次で生じる作業」「長時間を要している作業」「既に明確なマニュアルがある作業」を優先しているという。

進藤氏はまた、クラウドRPAに定型業務を移行させていく中では「どうしても人がやらなければならない作業」「社内構築するタイプのRPAツールに適した作業」がおのずと明らかになっていくことを説明。手軽なツールで、まずは容易なところからロボット化に着手することで「人かロボットか」「クラウドかオンプレか」といった二者択一に陥らない、適材適所の業務効率化が進められると結論づけた。

セッション最後に進藤氏からは、「少子化対策の効果は当分現れず、外国人労働者の受け入れ規模もすぐには拡大しない。そのため、日本ではRPAやAIを活用していくのが唯一の道。未来をつくるという意気込みで、勇気を出して踏み込んでみてほしい」と呼びかけてセッションを締めくくった。

即日導入できる手軽なRPAツール「BizteX cobit」

なお、この日のセミナーではディップ株式会社に自社のRPAツールを提供するBizteX代表取締役CEOの嶋田光敏氏も登壇し、SaaS(Software as a Service)としてクラウド経由でRPAの機能を提供している「BizteX cobit」について概要を解説。クラウドRPAならではのメリットとして、即日で使い始められる手軽さや、ウェブブラウザ上で行う操作の容易性、さらにクラウドベースのため導入規模の拡大が容易であり、月間100件以上にのぼる機能改善もただちに反映される点などを挙げた。

既に200件を超えるアカウントで3万回以上実行されている作業の中には、スマートフォンで撮影したレシートをデータ化できるクラウド型会計ソフトと、同じくクラウド型の顧客管理ツールを「BizteX cobit」による転記作業で連携させ、紙資料からの入力業務を大幅に省力化できたケースも含まれるという。

RPAの提供を通じて「向こう3年間で働く時間を半減できるようにし、働く人が自己学習に充てる時間や、家族と過ごす時間を増やせるようにしたい」と語った嶋田氏は「今後、導入から定着までのユーザー支援もしっかりやりながら、グローバルでの展開を目指していく」と、さらなるサービスの充実についても意欲をみせていた。

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