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従業員規模200名で実現するRPAの利活用−−−家事代行サービス「ベアーズ」が実践するマーケティング業務効率化

» 2019年01月11日 10時00分 公開
[平 行男RPA BANK]

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RPA BANK

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用事例といえば大企業のものがほとんどだ。そのため、自社にRPAを導入して本当に効果があるのかと不安に考えている中小・中堅企業も多いのではないだろうか? 実際には、従業員200名規模でもRPAを活用してマーケティング業務の大幅な改善を実現している企業もある。

2018年11月14日、東京都内にて開催されたBizteX株式会社主催の「X-CONFERENCE(クロス-カンファレンス)」にて、家事代行やハウスクリーニングのサービスを展開する株式会社ベアーズが、自社でのRPA導入事例を発表。同社マーケティング本部 本部長の後藤晃氏は、『小さい企業ほど、メリットが高い!! RPAは、日本人の新たなパートナー〜マーケティング部門の業務改革!!〜』と題するセミナーを行った。その内容をダイジェストでお伝えする。

株式会社ベアーズ マーケティング本部 本部長 後藤晃氏

事業急拡大に伴う業務システムや人手不足の課題はRPAで解決できる

ベアーズが取り組む家事代行事業は、日常の掃除から料理や買い物、洗濯、子供の送り迎え、墓参り、そしてチケットの確保まで、家庭における困りごとを解決するサービスを提供している。女性の社会進出の増加やワークライフバランスの充実といった社会環境の変化を背景に、家事代行の利用者は年々増え続けており、同社のサービス件数もここ数年は毎年20%以上の伸びを示している。

ところが、同社は事業が急拡大するなかで、変化する事業実態に基幹システムがマッチしなくなるという問題が発生していた。なかでも、マーケティング本部において特に課題となっていたのは、データの集計・分析業務だ。

マーケティング本部では、販売管理とCRM(顧客関係管理)の機能を含む基幹システムを中心に、マーケティングオートメーションツール、ワークフローツール、Googleアナリティクスなどのシステムを利用し、それらの収集した情報を、Googleスプレッドシートで集計・分析していた。この一連の作業にはデータの転記など人の手による作業も多いため、時間がかかるばかりでなく、ミスの発生も問題となっていた。

また、ベアーズの家事代行サービスはBtoCだけでなく、BtoBtoCのかたちでも提供されているが、その法人会員向けのレポート作成作業も大きな負担だった。企業の福利厚生の一環として、あるいは福利厚生代行会社の一メニューとして利用する法人会員に対して、ユーザーの利用状況やクレームの発生状況などを定期的にレポートとして提出するという業務だ。ところが、要望するデータは顧客企業によってまちまちで、マーケティング本部の担当者は、ほぼ手作業で、各社に合わせてデータを集計しレポートとしてまとめるという状況だった。

これらのますます煩雑化するデータ分析・収集業務を解決する方法として、同社はアウトソーシング、人材採用、基幹システムの改修なども検討したが、時間やコストの面で現実的ではなかった。そこで選んだ道が、RPAの活用だ。

複数のRPAを検討し、BizteX社のBizteX cobitを選んだ理由について後藤氏は、「クラウドであること、導入コストが安いこと、操作性の高さ、メーカーの開発能力、バージョンアップの頻度、問い合わせ対応の速度などを条件に精査した結果、BizteX cobitに決定した」と説明する。

RPAで月間50〜60万円のコスト削減を実現

同社は、2018年1月にBizteX cobitを導入。まずRPAの対象となったのは、大きな課題だったデータの収集業務だ。基幹システムから収集したデータや、Googleアナリティクスから収集した自社WebサイトのPV(Page View、ページビュー)数、アクセス数、セッション数といったデータを、Googleスプレッドシートに落とし込むまでの一連の作業を、RPAで自動化させた。

その導入効果について後藤氏は、「夜にセットしておき、朝出社したらデータがそろっている状況」と語った。それまでは8〜9人のメンバーで1〜2時間かけて行っていた作業であるため、合計すると週18〜19時間の業務がRPAによって削減できたことになる。また、「人間は細かい作業をすると必ずどこかでミスをします。しかしロボットは設定が合っていればミスをすることはありません。これは導入前には気づかなかったメリットです」とも語った。

そのほか、天気予報や競合情報の収集業務にもRPAを活用。家事代行サービスは、その需要は天候に左右されやすいため、天気予報に合わせてウェブ広告の入札単価を調整する必要がある。従来は、天気予報や競合サイトのキャンペーン情報の調査を人の手で行っていたが、RPA導入後はそれらを自動でクローリング。最新の情報を自動で収集できるため、広告出稿量の調整を適切かつリアルタイムで行えるようになった。

さらに、先に述べた500社の法人会員に対するレポート作成もRPAで効率化を実現した。企業のニーズに合わせた各社で異なるレポート項目について、基幹システムやCRMシステムからデータを取り、Googleスプレッドシートに集計結果を落とし込む作業を半自動化したのだ。従来は、この作業を営業担当5人で5営業日、通算で月間約200時間かけて行っていた。手作業での対応も残っているものの、RPAにより従来の半分の2.5営業日で済むようになり、月間100時間の工数削減を実現したことになる。「われわれのような小さな会社にとっては、非常に大きい効果です」と後藤氏は言う。

一方、導入時の苦労について次のように語る。「IT部門でなく、マーケティング部門主導でやったために、最初はなかなか操作に慣れず大変だった部分はあります。ただ反対に言えば、ITリテラシーがそれほど高くない部署でも導入できるということです」

導入時の体制としては、各チームにロボットのテンプレートを設定する者を1人配置し、その担当者をキーマンにしてチェック・アクションを繰り返すという形をとった。各チームにキーマンを配置したことでチェックとアクションがスピーディーに行え、実運用までスムーズに進めることができた。また、後藤氏は「BizteX社のカスタマーサポートが強く、かなりの頻度でサポートしてくれたことも導入成功の要因」とも語った。

同社では、まずフェーズ1としてマーケティング部門にのみRPAを導入し、トータルで月間50〜60万円相当のコスト削減を実現した。現在はフェーズ2として、CRMやバックオフィスにも適用範囲を拡大し、全社の業務効率化に取り組んでいる。目算では毎月120〜200時間の工数削減ができる見込みだ。

また同時に働き方改革にも着手し、残業を減らして早く退社する運動を進めているという。後藤氏は、「働き方改革の結果、働く時間が短くなって業績が落ちてしまうのでは意味がありません。労働時間を削減しつつ生産性を維持するために、RPAは最適なツールだと考えています」と講演を締めくくった。

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