RPAの導入にあたって「いろいろRPAツールがありすぎて、どれがいいのかわからない」「とりあえずスモールスタートで試験的に使ってみて、徐々に導入範囲を広げていきたい」というような悩みや課題を抱えてはいないだろうか。こうした悩みや課題を解決してくれるのが「UiPath(ユーアイパス)」だ。
2013年に登場したUiPathは、日本国内で800社、ワールドワイドで2,500社以上の導入実績を持つ世界有数のRPAツールだ。有料版だけでなく無料版もあり、スモールビジネスの団体や教育機関、非営利団体、個人の開発者などには「UiPath Community Edition」を無償提供している。また一般の民間企業でも、60日間無料のトライアル体験ができる。
このようにUiPathは、導入のハードルが低いRPAツールであり、本格導入へスケールアップしやすいという特徴を持っている。いったいどのようなRPAサービスなのか、詳しく見ていきたい。
目次
RPAツール「UiPath」とは
UiPathは、数千ものビジネスオペレーションに対応したロボットのワークフローを、1つの開発ツールによって作成できるRPAソフトウェアである。
UiPathには3つのアプリケーションが用意されている。自動化のプロセスを設計する「UiPath Studio」、管理コンソールの「UiPath Orchestrator」、実行機能を持つ「UiPath Robot」だが、これらをニーズに合わせて柔軟な利用することができる。
UiPathの歴史は、Microsoftの出身であるDaniel Dines(ダニエル・ダインズ)氏がUiPath社を2005年に設立したことからスタートした。2013年には、UiPathの第1号の提供を開始し、現在のUiPath Studioへと至っている。2017年2月には日本法人が設立され、日本語サポートも行われており、最新バージョンでは日本語化対応も実現している。
■UiPath Studio 製品概要
UiPathの特徴・できること
UiPathは、Excel、Word、Accessのような、Windowsのデスクトップ上で行うアプリケーションの操作から、クラウドサービスを含むWebアプリケーションの操作、Webブラウザからのデータ取得を行うスクレイピング動作をはじめ、ERP(統合基幹業務システム)やCRM(顧客関係管理)などの基幹システムにまで対応している。幅広い操作を連携して、自動化できるのが特徴だ。
ロボットのシナリオ(作業手順)を追加・変更したいときには、マウスによるドラッグ&ドロップで操作できるなど、直感的でわかりやすいインターフェースも特徴だ。また、ロボットのスケジューリングや作業負荷の管理、監査、監視、報告といった業務は、UiPath Orchestratorによってすべて集中管理でき、安全に運用できる。
UiPath導入のメリット
UiPathは豊富な機能を備えた自動化の開発環境を提供しており、ロボットによるワークフローを簡単に構築できる。ワークフローの作業記録(シナリオ化)は、アクティビティ(ロボットにさせる動作)をドラッグ&ドロップすることで単純にできるほか、ユーザーの動作を見て自動化する「レコーダー」を使用するだけだ。
また、ほかのRPAツールではカバーできない複雑な手順を自動化する場合は、拡張可能でオープンな設計環境で自動化できることもUiPathのメリットといえる。チームでリアルタイムに共同作業を行えるように設計されており、作業場所に関係なく、複数の担当者がいつでも同時にデータにアクセスすることも可能となっている。
UiPathと他のRPAツールとの違い
UiPathとほかのRPAツールとの違いは、開発・実行・管理といった機能がそれぞれ独立しているところだろう。また、サーバーにインストールして開発・実行・管理を行う「サーバー型」にも、PCにインストールしてデスクトップで開発・実行のみを行う「クライアント型」にも対応しているという特徴もある。
そのため、開発・実行機能だけの最小単位からスタートし、さらなる開発や実行機能が必要になったときはPCを増やして管理機能を追加し、業務を大きく展開するといった利用が可能だ。UiPathは予算に応じて、スモールスタートから将来的な事業拡大まで、さまざまなフェーズで利用可能なRPAツールとなっている。
UiPathの3つのツールそれぞれの機能
UiPathは、UiPath Studio、UiPath Orchestrator、UiPath Robotという3つのアプリケーションから構成されているRPAだが、それぞれの機能をもう少し詳しく紹介しよう。
ワークフロー作成ツール「UiPath Studio」
ロボットで自動化できるワークフローを作成するUiPath Studioは、作業シナリオを作成する際にプログラミングコードを使用する必要がなく、直感的な操作で作業フローを記録し、モデル化できる。
UiPathは、ビジネスにおける数千ものオペレーションに対応しているため、ファイルの読み込みやクリック動作、アプリケーションの起動・終了といったアクティビティ(動作)をドラッグ&ドロップで指定すれば、それらの動作をつなぎ合わせることにより、さまざまな操作が自動化できる。
■UiPath Studioの動作環境
最低要件 | 推奨要件 | |
---|---|---|
CPU | 1.4GHz 32bit(x86) | デュアルコア1.8GHz 64bit |
メモリ | 4GB | 4GB |
.NET Framework | 4.6.1以上 | 4.6.1以上 |
OS | Windows 7(update KB2533623) | |
Windows 7 N | ||
Windows 7 SP1(Update for Universal C Runtime) | ||
Windows 8.1 | ||
Windows 8.1 N | ||
Windows 10 | ||
Windows 10 N | ||
Windows Server 2008 R2(update KB963697、KB2999226およびDesktop Experience) | ||
Windows Server 2012 R2 | ||
Windows Server 2016 | ||
Citrix環境 |
ロボット管理ツール「UiPath Orchestrator」
UiPath Orchestratorは、作成したロボットの稼働状況を管理するアプリケーションだ。アクティビティの監査や監視、さまざまなプロセスのスケジュールと待ち行列(作業処理の順番待ち)を管理できるほか、レポート作成機能も備えている。
また、リリース管理(本番環境への変更管理)、コラボレーションツール、集中ロギング(包括的なログ管理)、ロールベースアクセス制御(認められたユーザーによるシステムへのアクセス管理)もサポートされている。API(アプリケーションプログラミングインタフェース)により、社内外の各種アプリケーションと連携させることも可能だ。
■UiPath Orchestratorの動作環境
サーバーの種類 | ロボット数 | CPUコア | メモリ | ストレージ | |
---|---|---|---|---|---|
~250台の無人ロボットのサポート | Webアプリケーションサーバー | ~20 | 4 | 4GB | HDD 100GB |
~50 | 4 | 4GB | HDD 100GB | ||
~100 | 4 | 4GB | HDD 150GB | ||
~200 | 4 | 4GB | HDD 200GB | ||
~250 | 4 | 4GB | HDD 200GB | ||
SQL Server | ~20 | 4 | 8GB | HDD 100GB | |
~50 | 4 | 8GB | HDD 200GB | ||
~100 | 4 | 8GB | HDD 300GB | ||
~200 | 8 | 8GB | SSD 400GB | ||
~250 | 8 | 16GB | SSD 400GB | ||
Elasticsearch Server | ~20 | 4 | 4GB | HDD 100GB | |
~50 | 4 | 4GB | HDD 100GB | ||
~100 | 4 | 8GB | HDD 150GB | ||
~200 | 4 | 12GB | HDD 200GB | ||
~250 | 4 | 12GB | HDD 200GB | ||
250~500台の無人ロボットのサポート | Webアプリケーションサーバー | ~300 | 8 | 8GB | HDD 100GB |
~400 | 8 | 8GB | HDD 120GB | ||
~500 | 16 | 8GB | HDD 150GB | ||
SQL Server | ~300 | 16 | 32GB | SSD 400GB | |
~400 | 16 | 32GB | SSD 500GB | ||
~500 | 16 | 32GB | SSD 600GB | ||
Elasticsearch Server | ~300 | 4 | 12GB | HDD 500GB | |
~400 | 4 | 16GB | HDD 600GB | ||
~500 | 4 | 16GB | HDD 600GB | ||
500台以上の無人ロボットのサポート | SQL Server | 500~ | 16 | 64GB | SSD 800GB |
ロボット実行ツール「UiPath Robot」
作業シナリオを実行するためのアプリケーションがUiPath Robotだ。従業員のデスクトップPC内にインストールし、人が操作することにより動作するロボット「Front Office Robot」と、サーバーで動作し、人による操作が不要なロボット「Back Office Robot」の2つを用意している。
なお、Front Office Robotは、人とロボットが協同で作業するように設計されているため「人間主導型ロボット」とも呼ばれる。一方、Back Office Robotは人の操作が不要なため、「ロボット主導型ロボット」などと呼ばれている。
■UiPath Robotの動作環境
最低要件 | 推奨要件 | |
---|---|---|
CPU | デュアルコア1.8GHz 32bit(x86) | クアッドコア2.4GHz 64bit(x64) |
メモリ | 4GB | 8GB |
.NET Framework | 4.5.2以上 | 4.5.2以上 |
OS | Windows 7(update KB2533623) | |
Windows 7 N(update KB968211) | ||
Windows 8.1 | ||
Windows 10 | ||
Windows Server 2008 R2 | ||
Windows Server 2012 R2 | ||
Windows Server 2016 | ||
Citrix環境 |
UiPathの使い方
UiPathはWebブラウザからデータを取得し、ファイルに書き出してメールで送付したり、複数のアプリケーションと連携し、同時並行で操作しながら複数の従業員と情報を共有したりできるなど、その利用方法は実に豊富だ。
以下に、UiPathのデモ動画を紹介する。動画を見ることで、UiPathの操作の簡単さをより理解することができるだろう。
Webブラウザからのデータ取得
ウィザード(対話形式)を使用してWeb上のデータを取得する場合、まずはUiPath Studioで新しいシーケンス(動作の順序)を作成する。ウィザードを起動すると、データ取得の条件をダイアログで聞いてくるので、それに答えていくだけで準備が完了。実行するUiPath Robotはバックグラウンドで機能し、わずかな時間でデータを取得してくれる。
下の動画は、Webブラウザから簡単にデータを取得できる様子を紹介したものだ。Webページ上の構造化されている金融データを取得し、CSVファイルにデータを書き出して、メールで送信する作業を数分で自動化している。
■【デモ】UiPathによるWebブラウザーからのデータ取得
さまざまなアプリケーションとの連携
UiPathは、複数のアプリケーションを並行して操作することができる。ERPやレガシーシステム(古くなったコンピュータシステム)とも連携することが可能だ。
以下の動画では、Excel、Word、PDF、メール、ERPの「SAP」、mac OSの「ターミナル」、CRMの「Salesforce」といった7つのアプリケーションを同時に機能させ、データ処理する様子が紹介されている。
Excelファイルに、氏名、メールアドレス、SAP番号、個人に割り振られた個別コードが入力されているとする。ロボットは最初にこのデータを読み込んでターミナルを開き、各自のコードを入力して、ターミナルから全データを取得する。
次に、ターミナル、Salesforce、SAPを立ち上げてログインし、連動する全アプリケーションを準備する。そして、ターミナルから従業員のIDを見つけ出し、メールアドレスによってSalesforce内の同じ人物を特定(その際、Salesforce内にアカウントのない人物がいれば、自動で登録追加もする)。
取得したデータはWordのテンプレートに入力し、PDFに変換したファイルをメールに添付して送信する。その結果は、Excelファイルに追加されたデータや、従業員各自に宛てたメールにPDFファイルが添付されていることで確認できる。
■【デモ】UiPathによる様々なアプリケーションの連携
UiPathの導入事例・実績
日本では、大手金融機関や大手広告代理店、メーカーをはじめ、製造、情報、小売、サービス、エネルギー、商社、運輸、官公庁、自治体、教育といった幅広い業界でUiPathが導入されている。その代表的な例を紹介しよう。
事例1:約200の業務を自動化し、40万時間分の業務量の削減
クライアント:株式会社三井住友フィナンシャルグループおよび株式会社三井住友銀行
課題:生産性向上や業務効率化といった業務改革
大手メガバンクの三井住友フィナンシャルグループおよび三井住友銀行では、グループ全体の生産性向上や業務効率化などを進める業務改革室を設置した。その重点施策として、RPAを活用した業務改革を進めている。
<具体的な課題>
・生産性向上や業務効率化といった業務改革を進めたい。
・業務を可視化したい。
・無駄な業務の廃止や重複する業務の集約を進めたい。
<RPAによるソリューション>
RPAツールにUiPathを採用し、従業員みずからがロボットを簡単に開発できるデスクトップ型RPAと、24時間365日稼働して大規模処理が可能なサーバー型RPAを共存させた。
<RPA導入後の成果>
・コンプライアンス・リスク関連、業界情報や顧客取引情報の収集などの約200業務に対して40万時間分の業務量削減を実現した。
・2019年度末までに、約1,500人分の業務量にあたる300万時間分以上の業務量の削減を目指す。
・3年で500億円分、中期的に1,000億円分のコスト削減を目標としている。
事例2:10数万時間相当の業務を自動化
クライアント:SMFLキャピタル株式会社(現、三井住友ファイナンス&リース株式会社)
課題:業務システムの簡素化
リース事業を手掛けるSMFLキャピタルは、多くの業務システムが併存し、システム環境が複雑化していた。それに対して、業務プロセスの改善を通じて効率化に取り組んできたが、それもほぼやり尽くして限界を感じていたところ、RPAツールに注目し、UiPathを導入した。
<具体的な課題>
・事業展開の過程で多くの業務システムが併存するようになり、システム環境が複雑化していた。
・大幅なシステム投資を伴わずにできる対応可能な業務プロセスの改善活動は、ほぼやり尽くしていた。
<RPAによるソリューション>
RPA導入をリードする部門のスタッフがトレーニングを受けた後、全社レベルでのUiPathの導入を本格化。現場における推進役となる「RPAアンバサダー」を任命してトレーニングしたほか、全社横断的にRPAの推進をサポートする組織として、社内にCoE(Center of Excellence/組織を横断する部署)を設けた。
<RPA導入後の成果>
・RPAの導入により、千人規模の企業でありながら10数万時間相当の業務が自動化された。
・RPAの導入が業務プロセス自体を見直すきっかけとなった。
・新たな取組みにチャレンジしやすくする企業文化が醸成された。
■SMFL Capital is using UiPath robotic process automation
事例3:600工程の業務を自動化し、約16,000時間を創出
クライアント:株式会社電通
課題:「働き方改革」での業務見直し
日本最大の広告代理店である電通は、2016年11月から「電通労働環境改革本部」を設置して、大胆な「働き方改革」を始めた。夜22時以降の業務は原則禁止、勤務間インターバルの導入など、実施した改革は50を超えている。それと同時に、RPAを導入して業務も見直すこととなった。
<具体的な課題>
・過労死事件を受け、大胆な「働き方改革」を進める必要があった。
<RPAによるソリューション>
Uipathで、データ分析処理や経理業務の一部工程などの自動化を進め、400の業務をRPAで自動化した。
<RPA導入後の成果>
・600工程をロボットが代替することで、月間約16,000時間もの時間創出(短縮)ができた。
・Excelシートの集計作業をRPAで自動化し、従来なら手作業で3時間かかっていた作業をわずか数秒で終えられるようになり、月間で延べ10,000時間を超える業務量の削減を実現できた。
UiPathの価格・ライセンス体系
UiPathには、有償版ツールのほか、期間制限のない無償版ツールUiPath Community Editionが用意されている。
UiPath Community Editionの利用は、教育機関、非営利団体、小規模事業者(年間売上100万ドル以下または250台以下のワークステーション環境)に限られており、UiPath Orchestratorとの統合はできないという制限がある。しかし、利用条件に該当するのであれば、試しに使用してみるのもいいだろう。
なお、有償版のUiPathの料金体系は買取り形式ではなく、年間利用料(サブスクリプション)形式となっている。
ライセンス料金は販売代理店(パートナー)によって異なるが、UiPath Studioが35万~60万円程度、UiPath Orchestratorが250万円程度、UiPath Robotが15万~75万円程度(ライセンスの使用人数により異なる)となっている。1業務をロボットで自動化するだけなら、数十万円程度で利用できるだろう。
オンラインセミナー/アカデミー/日本語フォーラム
UiPathは日本を最重要拠点としており、日本語によるサポート体制を強化している。2018年には日本法人の体制を100名まで拡充して強化し、顧客からの要求にきめ細かく対応できるようになった。さらに、日本語対応したバージョンを発表している。
そして、オンラインセミナーなどの研修体制が充実しているのもUiPathの特徴だ。UiPathを学べる動画チャンネル「UiPath基本トレーニング」や、専門トレーニングコース「UiPath アカデミー」のほか、UiPath利用時に困った点やバグ報告などが確認できるコミュニティ「UiPath 日本語フォーラム」もあり、学習・サポート環境が豊富にある。
会社概要
会社名:Uipath株式会社
資本金:3,000万円
設立年月:2017年2月
代表者氏名:代表取締役CEO 長谷川康一
事業内容:RPAのグローバルリーディングベンダー
本社所在地:〒100-0004 東京都千代田区大手町1-6-1 大手町ビルディング1F SPACES
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