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“コロナ前”は戻らない。慣習を脱し、真に意義ある仕事を──RPAT大角社長に聞く

特集 テレワーク・リモートワークの今

ここ数年、PC上での定型作業を代替するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)が導入されるたび、ユーザー企業の多くは、作業負荷の軽減、さらに社員がより高付加価値な業務にシフトするため、と狙いを説明してきた。実際、RPAで煩雑な作業から解放されたバックオフィスの従業員が営業支援に回るなどの例も現れている。

通常業務の一部が消えただけでワークスタイルが大きく変わることを考えれば、オフィスへの出勤をはじめ、対面の社内会議、客先訪問、そしてリアル会場の催しをいったん軒並み白紙にした新型コロナウイルスが企業社会にもたらすインパクトは、現時点の予想をはるかに超えたものとなるだろう。

「今こそ習慣になった働き方を脱し、本質的な目的達成にふさわしいスタイルへ変わるとき」。国内におけるRPA普及の草分け的存在であるRPAテクノロジーズ株式会社(東京都港区)の大角暢之社長は、そう訴える。RPAの導入支援事業を通じ、自社内外のワークスタイルを最前線で見つめてきた同氏に、現在何が起こっているか、そして来たるべき時代の働き方をどう思い描くかについて聞いた。

「BizRobo! LAND 2019 TOKYO」(2019年9月18日に開催)にて講演する大角氏
「BizRobo! LAND 2019 TOKYO」(2019年9月18日に開催)にて講演する大角氏

市場の中にいられるなら、出社は不要

─国内市場を代表するRPAツールの1つ「BizRobo!」のベンダーとして、感染予防が最優先される状況下のユーザー動向、また象徴的な活用事例について、まずお聞かせください。

社内の事務処理をロボットに任せ、在宅でのリモート管理で業務を継続する運用は当たり前のものになりつつあります。このほどユーザー企業に対し、テレワーク前提の環境でBizRobo!が業務に役立っているか尋ねたアンケートでは、貢献度が「非常に高い」「高い」との回答が4割近くに達しました。

今回の事態を受けて新たに生じた事務作業でも、さっそくBizRobo!が役立っています。例えば、飲食店などに感染予防対策の協力金を支給する愛媛県庁は、手書きの申請用紙からのデータ取得や返信文作成向けに、AI-OCR(AI<人工知能>技術を取り入れた光学文字認識機能<OCR>)の「事務ロボ」と併せてBizRobo!を採用しました。全国の世帯に1人10万円を支給する特別定額給付金関連でも、一部自治体で同様の仕組みが用いられています。

医療機関では、外来患者の来院経路などを新たに確認し始めたのに伴い、問診票からの文字認識と電子カルテへの登録を行うロボットを千葉県の東京歯科大学市川総合病院が開発しました。他の医療機関にも開放されており、医療分野で進むロボットの共有化の一例となっています。

業種・業界を問わず、企業競争力に関わる業務はロボットを社内開発したいが、一過性の仕事や汎用的な作業は“出来合い”のツールで手間をかけず自動化したいという、RPAへのニーズの二極化が、コロナ禍以降いっそう鮮明になったと感じます。

─貴社はさる4月6日に都内で本社を移転し、ちょうどその翌日に緊急事態宣言がありました。業務の現況はいかがですか。

さしあたりは計画通り、全員分の机を用意して移ったものの、ほぼ全面的にテレワークへ切り替えたため社員の約95%が出社していません。オフィスチェアは各自の自宅に送って使ってもらっています。

本社にほぼ誰もいない状態で1カ月以上、特に支障なく業務が行えています。正直もったいない状態ですが、人数分の執務スペースは不要とはっきり分かったことはプラスに受け止めています。

対外的な部分で大きいのは、「ダイレクトタッチ」と名付けて緊急事態前から進めてきた、BizRobo!ユーザーとの新たなチャネルが育ってきた点です。これは、導入先でのロボット稼働状況をリモートアクセスで共有しながらチャットで意見交換し、より有効な活用策を探る伴走型のサービスで、社員以外のアクセスに慎重な企業からも直接対面に代わる手段として急速に受け入れられつつあります。

リアルの場で開けなくなったセミナーはオンライン開催に切り替えましたが、市場との接点は引き続き維持できている実感があります。オンラインでも人対人の関わりを保ち、市場の中にいられると分かった以上、どこで働くかはほぼ問われなくなったといえます。マーケティングや営業、カスタマーサクセスの業務も今後、100%とまではいかなくとも大幅にオンライン化・リモート化するでしょう。

─経営者としてのご自身の働き方には変化がありましたか。

社内外との会議が全てオンライン化して意志決定が速くなりました。これまで1月半かかっていたものが3日で終わることさえ珍しくありません。

特に、複数企業間で進めるプロジェクトの調整は劇的に効率化しました。これは従来、大筋で合意した後で各社が持ち帰り、専門家を交えた社内検討を数週間がかりで行っていたところ、Zoom会議中に関係者を直接呼び出し、直近のアポイントをすぐ入れるケースが増えたことが大きいです。もちろん移動時間がなくなったぶん、単純に1日あたりのミーティングの数が増えたこともスピードアップにつながっています。

プラスの変化が多いですが、強いてマイナス面を挙げるとすれば、移動中にできた休憩と考え事の余裕がなくなったことでしょうか。絶え間なく予定が入る毎日は疲れますが、もう以前の感覚には戻れないと思います。

コロナ禍で実証された、RPA推進の大原則とは

─ここ数年、全国で着実に広がってきたRPA推進の取り組みに対し、今回のコロナ禍はどの程度の影響をもたらすでしょうか。

大枠は以前と変わらないでしょう。むしろ逆に、私たちが一貫して強調してきた「ロボットは“人”である」、そして「“現場増殖型”での運用」というコンセプトが、今回のコロナ禍を通じて正しさを証明したように思います。

そもそもRPAの推進にあたり、どのツールを選ぶかはあまり重要ではありません。また同時に、何かもっともらしく聞こえる「RPA」という言葉だけが独り歩きしてはならないとも考えています。

大切なのは、ロボットがデジタルレイバー(仮想的な労働者)として機能すること、つまり生身の人間が効率的に働き、豊かに暮らすための“部下”として使う点にあると、私はずっと訴えてきました。

これを体現したRPAユーザーとして、私はよくオリックスグループの例を挙げています。沖縄にあるバックオフィスの拠点は子どもを預けて車通勤するワーキングマザーが多く、渋滞を避けて帰宅するために、日々タイトな時間的制約があります。

そうした中でRPAによる業務効率化に取り組んできたこの拠点では、従業員全員がリモート勤務できる体制を、既に3年前から構築しています。しかも終業の1時間前倒しや週休3日制の導入で労働時間を減らした上、高まった生産性の還元として昇給まで実現したと聞いています。

つまり、デジタルレイバーを部下としてマネジメントし、その数を増やしていけば、新型コロナ対策のテレワークに限らず、勤務環境全体を底上げすることが可能だということです。

─RPAに取り組む基本的な意義を理解したユーザーは、リモート化にも円滑に対応できたということですね。では、現場増殖型の運用が正しかったとは、どういうことでしょうか。

現場増殖型とは、RPAの活用拡大戦略です。具体的には、迅速かつ継続的にロボットをマネジメントできるよう、外注や派遣エンジニア任せにせず、社内人材、それもなるべく導入現場に近いメンバーで開発運用を担うコンセプトです。

一定の社内教育が必要となるため、BizRobo!の既存ユーザーも、全てが現場増殖型ではありませんでした。しかし、このコロナ禍で直接対面のやりとりができなくなり、社内の別部署であるIT部門や外部企業に運用を依頼していたユーザーは、新たな事態に合わせたフレキシブルなロボット活用が困難となりました。「やはり現場増殖型しかない」ということで、現場のメンバーに対するRPA研修の問い合わせが相次いでいます。

観光需要の減少で従業員の約3割を休業させたあるリゾートホテルでは、日ごろPCを触らない人も含め、自宅待機中の全員がデジタルレイバー研修を受講しています。これまで通常業務で手一杯だったスタッフに、多様なテクノロジーの“つなぎ役”となるRPAを学ばせて、事態の収束後は業務効率化やAI活用を一気に進めるそうです。

オフィスを離れ、実地の変革に集中する

─RPAの導入支援を通じ、業種・規模ともにさまざまな企業の現場をご存じだと思います。では今後、国内企業のワークスタイルはどうなるとご覧になりますか。

ずいぶん前から必然性を失っていたのに長年の習慣でやめられなかった、混雑に耐えて都心に集まり、同じ時間・同じ場所で働くというスタイルが、いよいよ過去のものになるのではないでしょうか。

それに伴い、1人ひとりの働き方、そしてマネジメントでも“頑張る社員を会社が守る”という家族的・情緒的な側面が薄れ“目標とした成果を市場で出せるか”という個人単位のドライな尺度に変わっていくと思います。

社員は顧客のビジネスの成功だけに集中すればよくなり、社内の顔色をうかがう必要はなくなります。このコロナ禍が過去にとらわれず最適なやり方に変える格好のチャンスとなり、優秀な現場は顧客と歩調を合わせ、目覚ましい効率化と関係強化を自律的に達成していくでしょう。従って、上司も部下の行動を細かくチェックするよりは、自身の顧客と向き合うことへ仕事の重点を移していくのではないでしょうか。

付き合いのある欧米のRPAベンダーは10年前からそうでしたし、最近知った中国メーカーのマネジメントも同様です。日本もようやくグローバル基準に近づくということでしょう。会社組織は階層的な序列を失い、いくつかのプロジェクトが集まる“器”になっていくでしょうし、もっと言えばホワイトカラー労働そのものが消えるはずです。

─にわかには信じられませんが、本当にホワイトカラー労働者がいなくなるのですか。

はい。大半の事務処理はテクノロジーで代替可能である以上、将来的には必ずそうなると思います。もちろん過渡期には、社員3割・デジタルレイバー7割の部署を統括する課長といった管理職も必要でしょうが、いずれはプロジェクトに必要な人と技術を結ぶプロデューサーと、実作業を担う技能職だけで事足りるようになります。

─逆に、企画運営する人と、現場で手を動かす人はどうしても必要ということですね。

そう思います。特に少子高齢化が進む地方では、ライフラインを維持しながら新たな産業を興すため、RPAとIoTを併用するなどして実地の作業を大胆に再構築する必要があります。

店舗での在庫管理と発注業務の自動化、遠隔診療、農林水産業のダイレクトマーケティングなど、有望な領域は数えきれません。それと同時に、非競争領域に属する社内業務は極力効率化しなくてはならず、地域特化型の事務受託が拡大する余地も残されています。

これらの実装や保守運用のリソースを、地域ごとに“地産地消”できるよう、地場の有力企業と連携しながらRPA人材の育成に力を入れていきたいと考えています。

─社内の業務改善や、その支援に携わる読者に、いま呼びかけたいことは何でしょうか。

“コロナ後”が来るか“ウィズコロナ”の時代となるかはともかく、今回の一件をきっかけに働く場所・働き方・コミュニケーションに関する価値観が大きく転換しつつあると、多くの人が直感的に気づいているはずです。

この時代認識、そして終わりゆく時代でなく、来たるべき時代に向かっていこうという意識を、まずは共有したいと思っています。

「働くな、成し遂げろ」と、私は以前から社内でよく言ってきました。社会的に意味があるのは労働そのものではなく、イシュー(問題)やウィッシュ(願望)の解決・実現であり、働く本人にとって本質的な価値も、そうした達成を通じた自己実現や愛情表現にあると考えているからです。

今後、真に社会的意義のあることや、自身で価値を感じることのために働こうとするとき、会社組織にまつわる従来の常識は完全に消え去ることでしょう。それでもなお、地理的な制約やITリテラシーの格差は残ります。

だからこそ全国のあらゆる業務の現場で、身近な道具としてRPAが使えるようにしたい。デジタルレイバーを自身の部下として使いこなすことで、場所や産業を問わず1人でも多くの人が、より高度な自己実現を達成してほしいと願っています。

─いくつもの観点から、いま起こりつつある変化を立体的に解説いただけたように思います。今回はご多忙のところ、貴重なお話をありがとうございました。

取材協力:
RPA テクノロジーズ株式会社

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