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Excel業務の効率化はRPAだけに頼らず適材適所で──CTCシステムマネジメントが自社での経験から導いた解「Robochestration」とは

» 2020年01月17日 10時00分 公開
[加藤学宏RPA BANK]

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業務効率化、自動化のためにはどのようなツールが最適なのか。今注目されているRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、市場の盛り上がりに呼応してさまざまな製品が登場している。

最近では「思ったような効果が出ない」との声も聞かれ、投資対効果や目的に合わせてより正しいツールを選ぶために慎重にならざるを得ないが、おおむね似た機能を搭載しており、選定は悩ましい。

「RPAだけではなく、不得意な業務には他のツールを組み合わせるべき。そもそもExcel業務が多ければ、ボトルネックの解消にはRPA以外の選択が効果的」

そう話すのは、自社での経験も踏まえた結果、1つのRPA製品だけに頼るのではなく適材適所でツールを活用する「Robochestration(ロボケストレーション)」を提案するCTCシステムマネジメント株式会社(以下、CTCS)だ。ユーザーと導入支援、両方の経験を持つ同社の「業務効率化に必要な考え方」について話を聞いた。

■記事内目次

  • まず自社業務にRPAを適用した結果、「Robochestration」の概念を形成
  • 特にExcel業務ではRPA以外の選択肢
  • システムと業務のギャップを吸収して効率化を実現
  • 人の力も組み合わせた柔軟なオーケストレーションが効率化の秘訣

(左より)CTCシステムマネジメント株式会社 デジタルビジネス本部 サービス戦略部 部長 伊藤千博氏、同部 第3課 課長 櫻井良光氏

まず自社業務にRPAを適用した結果、「Robochestration」の概念を形成

−CTCSが自社でのRPA導入経験を通じて打ち出した「Robochestration」というコンセプトについて教えてください。

伊藤千博(デジタルビジネス本部 サービス戦略部 部長): CTCSはシステムの運用を中心とするサービスを提供している会社です。私たちサービス戦略部では、2017年に流行し始めていたRPAの検証・適用をスタートさせました。

特にRPAをはじめとする業務効率化ツールに関しては、まず自分たち自身の業務にも適用してみて、その経験も踏まえて顧客へ製品やサービスを提供すべきだと考えましたので、自社での適用から始めたのです。

櫻井良光(デジタルビジネス本部 サービス戦略部 第3課 課長):RPAを業務に適用していくうちに、RPAの「得意なこと」「苦手なこと」がわかってきました。1つのRPAだけで業務全体の効率化を図るのではなく、適材適所でツールを使っていくことが大切であるという考え方なのです。

そこでCTCSでは、「Robochestration」というコンセプトを打ち出しました。ロボットの作業、人がやる作業、他のシステムとの連携、これらを組み合わせること(オーケストレーション)でベストな効率化を目指すという方向性です。

特にExcel業務ではRPA以外の選択肢

−特に適材適所で効果が出るとわかった作業や業務には、どのようなものがありますか。

伊藤: どのRPAツールでも共通して言えるのは、「Excelの業務でつまずきやすい」ということでした。RPAが得意なのは、PC操作の繰り返し業務です。一方で幅広い業務で利用されているExcelによるデータ処理では、セルの特定、計算、集計などを行っているため、RPAでもできなくはないケースがあるものの、基本的には不向きですし開発も大変です。

櫻井: そこでRobochestrationの考え方では、RPAに任せることはシステムからCSVファイルを取り出したり、処理結果をシステムに登録したりする入出力の部分にとどめました。Excel上での処理自体は、xoBlos(ゾブロス)というExcel業務に特化した自動化プラットフォームを使用します。

ノンプログラミングで定義をExcelで記述する仕組みなので、Excelのスキルがあれば十分。RPAよりも簡単に開発できますし、例えば取引先から送られてくるデータの項目が入れ替わっても、Excelでセルの順番を入れ替えるだけで対応できるなど、メンテナンスも容易です。視覚的に誰が見ても仕様を把握しやすいことも利点です。

伊藤: 「RPAを導入したい」と声がかかって課題を聞いていくと、RPAツールが答えではないこともあります。システム入出力をともなう業務の効率化というよりも、Excel業務の効率化が中心だったというケースは少なくありません。だったら、まずxoBlosでExcel業務だけを効率化してみて、さらに自動化の幅を広げたければRPAを追加してはどうかという提案もしています。

その場合、Excelにデータを渡すのは手作業になりますが、必ずRPAに置き換えるべきとはいえず、投資対効果を考えながら後で判断してもいいのです。RPA以外のシステム運用ツールが適している場合もあり、他の選択肢があることも説明しています。

システムと業務のギャップを吸収して効率化を実現

−CTCSでxoBlosをどのような業務に適用して検証しているのか教えてください。

伊藤: 1つは、営業情報の集計作業です。毎月の売上情報や翌月の見込み情報を作成するために、いろいろなデータを集計するのですが、かなり手間がかかっていました。

例えば実績データは会計システムから出てくるもので、勘定科目ごとに並んでいる数字の形を変え、前月見込んだ案件数字と合っているかマッチングしていきます。ライセンス契約などを扱っており件数も多く、数百件の見込みと着地を一つずつ突き合わせて、何が原因で差異が出たのか分析するのに一日以上かかります。まずはこの集計ができないと翌月、つまりもう始まっている当月以降がどうなるかの見込み作成に進めません。そのため課長クラスの管理者は、残業や休日出勤を余儀なくされることもありました。

時間がないと、どうしても集計することに注力してしまっていたのですが、xoBlosで自動化して大幅に時間を短縮。営業担当者から提出された数字の内容を詳しくレビューしたり、ディスカッションの時間を増やしたりと、営業戦略を討議する時間に使えるようになりました。

櫻井: もう1つ、労務管理にもxoBlosを活用しています。CTCSでは1000人を超える派遣パートナーの協力を得ています。月末に実際の勤務時間を集計して、派遣契約の時間を超過していないかチェック。そして派遣会社から届く請求データを人単位で突き合わせて、差異がないか確認していきます。

このとき、弊社が勤務時間を把握するのに使っているのは「契約管理」のWebシステムです。派遣会社との契約をスムーズにするために最適化されているので、労務管理者が扱うのにベストな形式ではデータを取り出せません。CSVファイルをダウンロードして、一人ずつExcelで集計し直す作業が非常に煩雑でした。

−システム化されていても、目的によって設計思想は異なるでしょうし、すべての立場にとってベストなものなど無いかもしれませんね。

櫻井: そのギャップを埋めるのにxoBlosのようなツールが活きてきます。月末から月初にかけて、限られた時間内でチェックし終えることが求められるなかでは、とても威力を発揮します。

私たちの部署だけでも毎月2、3時間かかっていたのが、xoBlosで5分間に短縮することができました。

人の力も組み合わせた柔軟なオーケストレーションが効率化の秘訣

−xoBlosにより大幅に業務時間を短縮したCTCSの今後の展開を教えてください。

櫻井: ツールの観点では、繰り返しになりますが、やはり適材適所です。自分たちではコントロールしきれない外部Webシステムが多ければ、そもそも自動化に限界があるかもしれませんし、人間が担当すべきこともあるでしょう。そうした選択肢を提案するなかで、xoBlosの果たす役割は大きいものです。

xoBlosはデジタル・インフォメーション・テクノロジー株式会社が提供しているのですが、CTCSが活用するなかで、自信を持って顧客に紹介できるツールだと考え、正式に代理店契約を結びました。私たちが関与するからには、ただ紹介するだけではなくて、当然ながら活用のアドバイスや細かなサポートも提供していきます。

−最後に、これまでの活用や提案を通じて、Robochestrationを実践するためのポイントを教えてください。

櫻井: 完全自動化するだけではなくて、人の手を入れるところは入れるという判断があったほうが効率化は進めやすいですね。RPAなどツールでの処理は、止まることを前提に業務を設計しておくべきですし、いざという時のために定期的に訓練しておくことも大事。人の視点をまったく抜いてしまうのではなく、いかにツールと協力していくか。それが不可欠な視点だと思います。

伊藤: 少子高齢化で、これまで以上に人の存在価値が高まるなか、どうすれば効率化で貢献できるか考え続けています。改めて「効率化は手段」であり、目的ではないのだということを思いますね。今、効率化の切り札としてRPAなどのツールが注目されている影響でしょうか、どうしても手段にばかり目が行きがちです。それでも一時的には効果が出るかもしれませんが、「RPAを入れても思ったほど効果が出ない」といった悩みもお聞きします。

取り組みがうまく進められている顧客は、みなさん現場と情報システム部門が目的を共有して、会社として一体となって動けていると思います。どうしても現場部門だけでは推進力にも限りがありますし、全社視点で展開も考えられる立場の方が入ることが欠かせません。そして組織外の専門家だからできる発見や貢献があると思っています。

テクノロジーよりも、しっかりお客様の状況に向き合うには、ツールだけではなく現場の人の課題も見ていきたい。それがRobochestrationに込められている想いであり、人との関わりが欠かせないシステム運用に強みを持つCTCSの使命でもあると考えています。

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