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銀行窓販の事務を支える「ロボ美ちゃん」―日本生命のRPA

「日生 ロボ美」。生命保険大手の日本生命が201412月、東京都内の拠点に初めて導入した2台のロボットは、親しみを込めてそう名付けられた。“彼女”たちの正体は、人間が担ってきた定型業務を肩代わりするRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)のソフトウエア。1年あまりの運用を経て、その仕事ぶりは“同僚”であるスタッフらの高い評価を獲得。担当する業務を着実に増やしているという。ここまでの経過と今後の展望を、日本生命保険相互会社金融法人事務開発グループの大岩根誠専門課長に取材した。

6台で20人分の働き」。今後は夜間勤務も

「偉いですね。粛々とそつなく働き、期待以上の貢献をしてくれていますから」。ロボットの仕事ぶりへの問いに、そう笑顔で答えた大岩根氏。2台のPCにそれぞれソフトを入れて始まった同社でのRPA運用は現在、6台体制まで拡大。追加した4台は本店所在地の大阪にあり、データセンターのサーバー内で稼働中だ。

“ロボ美ちゃん”らの担当業務は、いずれも日本生命が近年注力している「金融機関窓販商品」の事務だ。新規申込み受付けや保全手続き、支払といった事務全般を、年間およそ15万件処理している。直近4年で同商品の事務処理量はおよそ2~3倍に急増。この間、担当部署の事務スタッフも追加採用されたが、人手を増やす形での対応にはオフィススペースの制約などから限界もあったという。

「新規契約が伸びて最も増えたのは、紙の申込書の記載内容を基幹システムへ入力する作業でした。こうした定型業務に関する限り、ロボットの能力は人間よりもはるかに上。適材適所でRPAを活用し、極端な人海戦術を避けられたことは大きかったです」(大岩根氏)

大岩根氏によると、現在運用中の6台が処理している事務量は「20人相当」。それぞれのロボットがスタッフ3人分以上の働きをしている計算だ。しかもロボットは労務問題と無縁で24時間・365日、不眠不休の連続勤務に耐えられるという人間にないメリットも持つ。同氏は「接続先のシステムが夜間は休止することから、RPAにはこの間の作業がなく、現状ではまだまだ余力があります。社内からは『作業自体は単純なので、データの集計・統計作業を一括して任せたい』『加入者への電話といった人間が行うべき業務も、対象者の抽出といった準備作業はロボットで効率化したい』などの要望があり、ロボットの“夜間勤務”に向けた準備を進めています」と説明。ロボットにどの時間帯にどの業務を担わせるか、いわゆる「スケジューリング」次第で生産性向上の可能性はさらに広がる。人間との協業を目指して擬人化された“ロボ美ちゃん”は、今や頼りがいのある仲間として、すっかり職場に溶け込んでいるようだ。

人手頼みだった「小規模・多品種」業務が自動化

ここ数年で急速に導入実績を増やしたRPAよりも前から、同じく事務作業の自動化に用いられてきたソリューションとしてはITシステムが挙げられる。日本生命では、1,000万人超の顧客情報を管理するシステムなどを運用し、グループ企業としてシステム開発会社の「ニッセイ情報テクノロジー株式会社(NIT)」も擁している。こうした状況で、今回なぜRPAを採用したのだろうか。

大岩根氏は「当社が伝統的に強みとしている個人契約では、約5万人の営業職員を通じて寄せられる事務の処理に約3,000人が携わり、大規模なシステムも確立されています。一方、比較的新しいチャネルである銀行窓販は、強化が決まった数年前の時点で事務スタッフが100人程度。こうした規模感の違いを踏まえた上で、将来的な業務量増加に対応できるバックオフィスを、なるべく早く・効率的に構築する必要がありました」と背景を整理。「Excelのマクロと同じ要領で既存業務を自動化できるRPAは、そうした諸条件をクリアできる現実的な選択肢として導入が決まったのです」と振り返る。

現在同社のRPAは、大阪のサーバー内にある4台がNITによる管理下で新規契約の登録作業に集中。契約内容の変更など、それ以外の作業を東京の2台でカバーする体制となっている。東京の2台についての運用管理は、作業開始の指示や数百件ごとに実施する処理結果の確認、別作業への移行の指示といった通常の操作を事務スタッフが行う一方、設定の変更やエラー処理については、同社の開発担当者とNITの常駐エンジニアが担当している。

通常の運用でトラブルが発生することはまれだが、その際は急ぎの作業を人手でカバーしながら、可能な場合はRPAに他の作業を割り振る。現場からのトラブルの報告は、まず管理部門である大岩根氏の部署に上がり、そこから常駐エンジニアに対応を依頼する流れとなっている。機能の追加についても、導入現場と大岩根氏らでまとめた仕様に基づき、常駐エンジニアが実装を行う分業制が採られている。これは「RPAそのものの操作は容易でも、基幹システムと直結する当社の運用では接続先への詳しい知識が必要なため」(同氏)で、エンジニアの常駐化を機に対応可能な業務は一挙に倍近く拡大。タイムテーブルに沿って1台あたり110種類近くの業務を処理するようになっている。

銀行窓販部門の事務で運用が軌道に乗ったことを受け、同社の他部門もRPAへの関心をにわかに高めているという。「業務規模がわれわれに近い部門では特に、導入が検討されているようです。申込書のような紙媒体が介在するケースは典型ですが、相対的に小規模かつ多品種であることを理由に社内のシステム投資計画から外れてきた業務、定型的でありながら人手に頼るほかなかった作業を自動化できる点に、RPAの大きな意義があると思います」(大岩根氏)

ロボットの応用幅を広げるAIに期待。人間の業務も次のステージへ

費用対効果の面で想定を上回るメリットをもたらし、職場にも浸透した“ロボ美ちゃん”。その働きぶりに触発されるのか、導入部署のスタッフの間では「『業務改善につながる課題の発見』といった、より高度な仕事に取り組む意識が、少しずつ高まってきている」(大岩根氏)という。

処理能力と適応力の限界を試すように応用範囲を広げてきた同社のRPA。課題はないか尋ねると、大岩根氏は「今後ロボットにどこまでの業務量を委ねるか、人手によるサポートを控えて“ひとり立ち”させても安全か、重い責任を伴うコア業務まで自動化できるかといった検証が必要になってきました。対応業務の拡大に伴って連携先のシステムやアプリケーションの数が大幅に増えており、それらのアップデートにもれなく対応する仕組みづくりも欠かせません」とガバナンスの課題に着手していくと回答。順調に歩みを進めてきた同社の挑戦は、すでに「ロボットと協業するオフィスワーク」という未踏の領域に到達し、さらにその先を目指しているようだ。

「最新のAIを用いた手書き認識の精度は飛躍的に向上しているとも聞きます。AIと組み合わせていくことで、RPAの応用幅はさらに広がるのではないでしょうか」と大岩根氏。ホワイトカラー業務自動化の先に明るい未来を描くその表情には、“AI脅威論をあっさり一蹴する説得力があった。

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