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ソフトバンクが目指すAI×RPAを活用した未来の働き方

RPAは、人間の業務を代行する無形のロボットだ。一方、人型のロボットとしてはソフトバンクロボティクスの「Pepper」が有名だが、ソフトバンクは現在、RPAを活用した生産性の向上にも積極的に取り組み、多様なチャレンジを続けている。RPAの社内導入に携わるソフトバンク株式会社 法人事業戦略本部 戦略事業統括部の松井孝之担当部長に、ここまでの手応えと今後の展望を取材した。

Pepperの応答やAIの学習サポートにもRPAを活用

「当社は2015年から『Half & Twice』、2016年から『Smart & Fun!』というスローガンを掲げています。これは、新しいテクノロジーを駆使して社内の業務工数とコストを半分にし、同時に生産性と創造性を2倍にするという目標であり、また全社員がよりスマートに、楽しく働くというビジョンです。実際の取り組みにおいてはAI、ロボット、クラウド、セキュリティーなど、当社が法人向けの戦略事業に位置づけるソリューションを用いていますが、これらのソリューションで具体的なビジネスの課題を解決するとき、定型作業の代行が可能なRPAとの連携可能性を感じたことから、2015年春よりRPA試験導入を開始しました」。これまでソフトバンクでは、社内各部署から寄せられたRPA活用アイデアをのべ数百件検討。このうち高い有効性が見込まれる数十件でプロトタイプを組み、実地でテストを行っている。「部署限定での試験導入を経て、現在は、より大規模に複数部署が共同で活用するケースも出始めた」(同)ところだという。   これらの試験導入のうちPepperとの連携例では、RPAテクノロジーズ社の「BizRobo!/ベーシックロボ」を併用。Pepperが“商品に関する在庫問い合わせ”を受けとった後、(BizRobo!上で開発された)ソフトウェアロボットと連携開始し、在庫管理システムやECサイトを検索した上で結果を返答する、という一連のフローを自動化することに成功した。また同社は、「IBM Watson」を法人向けに展開しているが、Watsonが効率的に学習するため従来人手で行っていた工程、例えば学習させるデータの加工工程を一部RPA化することにより、スピードアップを図っている。

社内業務で「作業時間200分の1」をもたらす抜群の実行力

感情も表現できるPepperや、自然言語を理解し、学習し、人間の意思決定を支援するWatson、あるいは従来のITシステムと比べたときに、RPAの特徴や役割分担はどのようなものと位置づけられるのだろうか。   松井氏は「Pepperは“人型のフォルムを持ち、話しかけやすい”という、“対人間インタフェース”として優れた特性を持っています。また、Watsonに代表されるようなコグニティブテクノロジー/AIにおいては、インプットされた情報がどの様な意を持っているかを「認知」「判断」できるところに強みがあります。」と整理。また、ホワイトカラー労働の核心である情報処理のプロセスは「認知」「判断」「実行」と3段階に分類できるが、「現行RPAが強みを持つのは、特に“実行”の部分」(松井氏)だという。実際にソフトバンク社内におけるRPA導入テストの中では、それまで人が行っていた定型作業をミスなく処理しつつ、所要時間を実に「200分の1程度」まで削減できた例が複数あるということだ。   また、AIとRPAはどのような関係にあるのか。松井氏は自身で試作したセミナールーム予約のソリューションを例にとって、次のように解説する。 「申請者が利用希望日時やルーム種別を入力した際に、“準備時間として前後の時間帯も押さえておく必要があるか”、“飲み物等の準備も必要か”、といった聞き返しを適宜投げかけるなどして、手配に必要な状況を「抜け漏れなく整理」するのがAI(コグニティブテクノロジー)とすると、RPAが担うのはその後のステップ。前段で整理された各情報をもとに、人の代わりに申請フォームに順次入力を行うなど、実際に「手配」する業務を担います。また、あわせて、ご来社頂くお客様企業名でデータベースを検索し、お取引先として登録がされていれば当該企業コードを申請フォームに入力するといったような定型作業も実行させることが可能です。一般的に、定型部分を対象として手作業からRPAに置き換えるアプローチだけでもかなりの業務が効率化できますが、RPAとAIの親和性はきわめて高く、これらを併用することにより適用可能な領域/シーンがさらに広がってくるものと考えています。特に条件分岐判定が多い複雑なフローでは、先ず、人との対話を通じてAI(コグニティブ)が条件を見える化し、しっかりとシチュエーションを確定させた後、RPAに引き継ぐアプローチが有効。こうした構成を採ることで、RPAを適用できるシーンが増え、結果として享受可能なメリットも拡大していくものと考えています」

「まず実装」。その日に試せる速さを生かす

さらに、ITシステムと比較したときのRPAの存在について松井氏は「両者がもっとも異なるのは『変化への適応力』です」と指摘。「システム構築の場合、要件定義だけで数ヶ月を要することもありますが、それほどの時間が経てば、企業内外の状況が変わってしまうことも考えられます。もし実態と合わなくなったシステムに業務のほうを合わせればそれこそ本末転倒です。一方、RPAソフトには“ロボットを作成しやすいユーザインタフェース”や“各種支援機能”が具備されていることが多い為、ユーザー部門の担当者でも慣れれば数時間でロボットを実装することができます。業務の追加/変更や“気付き”にあわせて、自らロボットを作成/修正することが可能であり、変化適応のためのツールとして非常に有効なものであると感じています。これらの活用によってもたらされるスピード感こそが、RPAを重宝している理由なのです」と力を込める。   手早く容易に構築できるRPAの利点を最大限に生かすには、いきなり完全移行を目指すのではなく、元の手作業にいつでも戻れる環境を残しながら「まず実装し、使い始めてみる」姿勢が重要という。「せっかく素早い対応が可能なのですから、各部署の判断ですぐにロボットを構築できるような運用が効果的です。また、あわせて適切な管理・運営体制も重要となってきますが、当社の場合は導入部署と関連部門から成る全社横断組織『RPAコミュニティ』を通じて連携・統制を図ることとしています」(松井氏)   社内における「Half & Twice」「Smart & Fun!」実現の一環として導入されたソフトバンクのRPA。ただその先では、社会全体の「情報革命」を掲げる同社のビジョンとも重なっていくようだ。先行者として現在蓄積しているRPA活用のノウハウが、将来広く還元されていくイメージを、松井氏はこう描いてみせた。 「働き方改革という長期的な課題もあり、RPAは今後、PCやスマートフォンと同じくらい、誰もが当たり前に使うツール/概念になるというのが私個人の考えです。そうなったときに当社が求められるのは、RPAのユーザー企業として地に足がついた発想をし、自らの検証結果をもとに運用の勘どころをお伝えできることだと思います。運用確立までの試行錯誤をショートカットしていただくことで、生産性・創造性の高いスマートな働き方を実現するお役に立てたらと願っています」

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