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「ビジネスに生かすAI」の最前線とは――対談・人工知能学会前会長 松原氏×CogentLabs飯沼氏

先駆けとなる事例の出現から2年余りのうちに、国内ほぼ全ての大手企業が導入に至ったRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)。PC上での作業をソフトウエアが代替するRPAツールの活用は、業務フローの革新を通じて価値創造を図る「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の“出発点”と目されている。初動の勢いを得て、いよいよ加速しだしたDXのロードマップにおいて、最終的に向かうべき“ゴール”近くに位置づけられるテクノロジーの代表格がAI(人工知能)だ。未来への期待を一身に集める感もあるAIは、実際のところどのような技術で、企業の実務にどこまで貢献できるのだろうか。学界・ビジネス界のそれぞれ最前線から、識者の見解を聞いた。

左から)公立はこだて未来大学副理事長 松原仁氏、株式会社 Cogent Labs代表取締役飯沼純氏
(左から)公立はこだて未来大学副理事長 松原仁氏、株式会社 Cogent Labs代表取締役飯沼純氏

【対談者プロフィール】
松原 仁(まつばら ひとし)
公立はこだて未来大学副理事長。工学博士。1986年に東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程を修了後、通産省工技院電子技術総合研究所(現・産業技術総合研究所)に入所。2000年に公立はこだて未来大学の教授に就任し、2016年より現職。人工知能、ゲーム情報学、観光情報学などを研究領域とし『コンピュータ将棋の進歩』『鉄腕アトムは実現できるか』ほか著書多数。人工知能学会前会長、情報処理学会前理事、観光情報学会理事。カーシェアの普及を図る大学発ベンチャー「株式会社未来シェア」の社長も務める。

飯沼 純(いいぬま じゅん)
株式会社 Cogent Labs代表取締役。CRM(顧客関係管理)ツールで知られる米国Salesforce.com inc. の日本法人「株式会社セールスフォース・ドットコム」に13番目の社員として入社後、15年間にわたり同社の急成長に貢献した。2014年、エリック・ホワイトウェイ氏(現・Cogent Labs代表取締役)と会社を共同設立。海外の博士号取得者らを開発陣に迎えて製品化したAI-OCR「Tegaki」など、最先端技術の実社会への導入に取り組んでいる。

ネット社会がAIの進化を急激に加速させた

ー日本におけるAI研究の動向に詳しい松原先生は「AIのビジネスへの応用」が実用性を証明する上で非常に重要と以前のインタビューでおっしゃっています。今回は、実地でこの問題に取り組む飯沼社長と共に、現在の課題や今後の展望をお話しいただければと思います。

飯沼:最初に、当社を簡単に紹介します。「AIを使って人々の生活をより豊かにすること」をミッションに4年前に設立し、主に文書の認識・検索に関するサービスを提供しています。約50人の従業員は、6割強が外国人。ディープラーニング(深層学習)をはじめとするAI専門のエンジニアに加え、天文物理や脳科学、統計学などの学位を持つ研究者らが知見を生かし、有望な技術をいち早く採り入れています。

最初のプロダクトとしてリリースしたのは、高精度な手書き文字認識を実現したAI-OCR「Tegaki」です。Tegakiは既に多くの業界で事務処理に活用されているほか、RPAやデータ連携ツールなどのベンダーと提携し、一体的なソリューションとしても販売しています。

Tegakiはクラウドサービスとして提供しており、読み取りたい文書データのアップロードや認識精度の確認などは、すべてWebブラウザ上で行います。リリースから1年で、既に帳票など1万7,000種類の文書を処理しており、AIが認識した結果のほか、それに対する修正もフィードバックしていくことで日々精度を向上させています。

松原:私も大学院を出た30年前、電総研(旧通産省の「電子技術総合研究所」)に就職してすぐ日本語の手書き文字認識の研究をしていたので、認識精度を上げていく大変さはとてもよく分かります。懐かしい半面、当時とはケタ違いの精度に「技術が進んだな」と実感しますね。

OCRの性能向上にAIを役立てる取り組みには、実は長い歴史があります。私も電総研で、読み取る文字を整理するのにAIを使っていましたが、ビジネスへの応用には程遠かった。枠の中に1字ずつ書いてもらっても十分な認識精度が出なかったのです。

飯沼:今の技術ではもちろん、枠に入っていない文字も読み取れます。用紙と平行でなく斜めに書かれたりすると、まだちょっと難しいですけれど(笑)。

ーAI-OCRの精度が、それほど劇的に向上した理由は何でしょうか。

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