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日本企業の国際競争力を担う「デジタルレイバー」(前編)

» 2017年01月26日 10時00分 公開
[RPA BANK]

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世界経済フォーラム(WEF)の「Global Competitiveness Report 2016-2017(2016-2017 世界競争力レポート)」によると、日本の国際競争力ランキングは8位であり、前年の6位から順位を下げている。グローバルで競争が繰り広げられるなか、企業においても更なる生産性の改善や業務コストの削減を通じた収益性向上が求められている。では、企業はこの状況にどう対応すればいいのだろうか――。世界規模で大手企業の事業モデル変革や経営改善支援を行うグローバルコンサルティングファーム、KPMGコンサルティング株式会社の田中淳一氏と田邊智康氏に話を聞いた。

写真:田中淳一氏(左)、田邊智康氏(右) SSOAビジネスユニット――

KPMGコンサルティング SSOA日本統括、パートナーの田中淳一氏と同社ディレクターの田邊智康氏が所属する部門である。SSOAとはシェアードサービス・アウトソーシング・アドバイザリーの略。「シェアードサービス」とは、グループ企業内で個々の企業に置かれている人事や経理、総務などの共通業務を集中管理すること。また、「アウトソーシング」とは、企業がコアビジネス以外の業務プロセスの一部を専門業者に委託することである。

KPMGコンサルティング SSOAビジネスユニットは、シェアードサービスやアウトソーシングといった手法を用い、主に企業のバックオフィスの業務改革支援を行い、コスト削減・付加価値向上に貢献することをミッションとしている。 だが、シェアードサービスを取り入れ、アウトソーシングを行っても十分な効率を得られていないケースがある。そうした企業の話を聞くと、すでに様々な取り組みを行ってきたことがわかった。それでも、効率が不十分なのだ。 こうした状況を打開するためにはどんな方法があるのか――。KPMGコンサルティングの出した答えのひとつが、RPA(Robotic Process Automation)の活用である。

「RPA」が日本でも急速に浸透

「私たちがRPAに取り組み始めたのは2015年9月ごろ。ちょうど欧米でRPAが盛んになり始めた時期でしたが、日本でRPAに取り組む企業はわずかでした。しかし、遠からず日本でもRPAが広まっていくという感触を得たため、サービスラインアップに加えることにしました」。田中氏はこう振り返る。「RPAは人間の労働者の補完という意味で、デジタルレイバー(仮想知的労働者)とも呼ばれています」 なお、欧米でRPAが盛んになり始めた理由として、人件費の安い新興国に業務をアウトソースしてきたが、新興国の人件費が上がり、アウトソーシングによるコスト削減が難しくなってきたことが挙げられる。 KPMGコンサルティングがRPAをサービスラインアップに加えた当初、顧客の反応はそれほど芳しくなかった。だが、2016年に入ってからは、「RPAという言葉は知っている」「聞いたことがある」「何かで読んだことがある」と言われるようになった。特に2016年7月に日本RPA協会が設立されてからは、一気にマーケットに浸透してきたと感じているという。 その理由として、前述の通り、新興国への業務のアウトソースでコスト削減を図りにくくなったことと、日本の労働人口が減少し、人材不足が起きていることによる危機感が挙げられる。

RPAは3段階で進化していく

RPAの定義はまだ定まっていないが、KPMGコンサルティングでは、ホワイトカラーの定型業務を自動化するものや、AI(人工知能)を利用して非定型業務をルール化し、それを自動化するものをRPAとして定義している。 また、KPMGコンサルティングでは、RPAは3つの段階(Class1, Class2, Class3)で進化していくと考えている。Class1は定型業務を自動化する段階で、すでに実用化されている。Class2は例外対応や非定型業務を自動化する段階で一部実用化されているものの、多くは今後、実用化されるものである。Class3は高度なAIにより、作業の自動化だけでなく、プロセスの分析や改善、意思決定まで自律的に自動化するもので、将来的に実用化されると考えられているものだ。 「RPAがClass1からClass2、Class3へと進化していくことで、人が担っていた業務はどんどん低減されていき、人はより高度な仕事に注力できるようになります」。田邊氏はこう話す。

参考元:「IoTの先にあるAI労働力(RPA/Digital Labor)時代」(2016年12月7日)KPMGコンサルティング株式会社

RPA市場のプレイヤーとKPMGコンサルティングの特長

RPA市場の活性化に伴い、RPA関連のソフトウェア製品は増えてきている。日本国内でRPA事業をスタートして10年経つRPAテクノロジーズ社の「BizRobo!」や、英ユーアイパス社の「UiPath」英ブループリズム社の「blueprism」、米オートメーションエニウェア社の「AUTOMATION ANYWHERE」などが代表的なClass1のRPA製品だ。 KPMGコンサルティングのRPA事業の特長の1つとして、ベンダーフリーであることが挙げられる。特定のRPAソフトウェア製品だけを取り扱うのではなく、複数のRPA製品の中から顧客の要望に応えるのに最も適したものを選んで提供しているのだ。「まず、お客様がRPAを導入して何をしたいのかをじっくりと聞き、その上でお客様にとってベストなソリューションを提案し、話し合いを進めていきます」と田邊氏は言う。

また、システムインテグレーターと違い、RPAを活用したオペレーティングモデル(ターゲットオぺレーティングモデル:将来像の定義)の導入支援を行えることもKPMGコンサルティングの特長のひとつといえる。デジタルレイバーによりどのように業務を変えていくのか、どうやってコスト削減に結びつけるのかといったことを顧客と一緒に考えていくことができるのだ。 「お客様が思いつく業務だけにデジタルレイバーを適用した場合、期待したほどコストが下がらないということがあります。その点、当社は部門や企業の業務全体をアセスメントすることができるので、お客様の想定よりも数倍から数十倍のコスト削減を実現することが可能になるのです」(田中氏)

また同社は、監査法人系のコンサルティング会社であるため、監査や税務、コンプライアンス、内部統制といったこととも連携させることができる。そのため、顧客がRPAを導入した後の将来像を描けるのだ。 さらに、KPMGコンサルティングはグローバル企業であるため、欧米を中心にRPAを導入した事例が多く、成功したケースを参考にしてサービスを提供することもできる。 AI(人工知能)の活用にも積極的だ。業務改革という視点で、どうやってAIを活用できるのかに取り組んでいる。

また、会社としてRPAやAIに積極的に投資していることもKPMGコンサルティングの特長の1つ。SSOAビジネスユニットだけではなく、会社全体でRPAやAIを活用したコンサルティングサービスに力を入れているのだ。 いち早くRPA市場に着目し、RPA市場をリードしてきたKPMGコンサルティング。

後編では、同社がRPA事業を行う上で、使命と考えていることについて聞いた。

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